愛と怒りと悲しみの

とある理系サラリーマンのばら撒き思想ブログ

【不倶戴天】無知と差別とトリックスター

 

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本日、この記事が炎上していました。

 

インターネットの世界には、どの分野でも「詳しいオタク」がたくさんいる。

なぜならば、インターネットの言論には、(現実世界の)立場や権力が弱くても自由に参加ができるからだ。

むしろ必要になるものといえばパソコンのことを理解する技術力であり、インターネットの文化はオタクが最初に作り出したものだからだ。

そんなことを、以前このブログに書いた。

 

圧倒的な知識と経験を持ったおじさんが、無知でうかつな者を叩き壊す風景。

おじさんは、古来より「神」「解析班」「モヒカン」「~警察」など、実に様々な呼び方がされてきた。

なぜなら、ネット文化のあらゆる場所・時代において、おじさんはその影響力を行使していたからだ。

 

今日は、この記事特有の巧妙さと、おじさんたちの怒りの感情を解説してみる。

 

 

目次:

 

 

 

1. 今回の炎上記事の特徴

まず、今回炎上している「詳報:トヨタが頼った謎のAI半導体メーカー」はなかなか面白い事例だと思う。

 

今回の炎上は、「叩く難易度が非常に低い」というのが特徴だと思う。

Twitterやあらゆるコメント欄で言われているように、自分でパソコンを所有して、ゲームや動画などを見る者ならば簡単にたどり着ける知識であるからだ。

こんな簡単な条件だから、多くの者がクリアできる。

 

また、PCでゲームをやったり動画を扱ったりする者、すなわち現代の若者の割と大多数にとっては、グラボの性能というのは愛車の排気量と同じようなものだから。

「格」がつくものであり、誇りを持つものだから。

こんな簡単で重大なことだから、誰でも叩きたくなる。

 

この手の「叩く難易度が非常に低い」案件で、過去の事例はこんなところが思いつく。

いくつかを引用する。

 

Winnyとよばれる違法ソフトを安全に削除するその手段

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「ソースコード」と呼ばれる遠隔操作ウイルスのプログラム

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神いわゆるゴッド」が当時笑われたのも根底が同じような気がする。

マスコミや知識人のような、「社会的地位が高そうな人間」がしたり顔で隙があることを発言して、なおかつそれがお茶の間で称賛される(ような状況が存在する)のが、我慢ならないのだと思う。

 

 

2.記者の類まれなる技術力

一応この記事を書いた記者は、現在炎上している通り、「本当に知らない可能性」は無いでもない。

そして、こんなことも知らないような奴に経済誌の記事を書いて欲しくない、という理論は成り立つ。

 

www.huffingtonpost.jpNVIDIAによると、この記事の記者はNVIDIAのことについてよく知ってはいたらしい。すなわち、この記事はタイトルの過激さで客を寄せようと目論んだ、釣り記事である。

 

その前提で中身を読んでみると、この記事がいかに高度なのかが思い知らされる。

この記者は、確かに無知ではない。

そうじゃなければこんなにキモい文章は絶対に書けない。

特に5ページ目がアツい。「クルマを司るAIは“3人”いる」なんて、まるで高校一年生男子が挑む朗読大会のような、文系が考えるかっこいい理系を見事に体現している

タイトルで釣るだけでは決して終わらせず、中身でも楽しませてくれる非常に高品質な記事である。

 

記者の経歴を見ても、「本当に知らない可能性」なんてものはおそらく皆無である。

しかし、この記者がそれを釈明せずに、経歴だけをチラつかせて牽制を続けるならば、こんなことも知らないような奴は経済誌の記事を書くな!という罵倒は成り立つ。

 

注目を集めたところで、憎しみも集まるのでは意味がないと思うが、これが炎上芸というやつなのだろう。以前の記事で書いたように、信じる馬鹿が多ければ多いほどこういう戦法は有効になってしまうのだろう。

 

 

3.愛とか心とか、今まで何度も聞いているはず。

無知は差別を生む。

インターネットの言論で戦っている者の多くは、リアルの世界での立場や権力を持たない者である。こういう人種は、差別や迫害に弱い。

だから、今回のような無知を装って炎上させようという記事に、怒っている。

数にものを言わせて仕返ししてやる、指をさして笑ってやる、という悪意が渦巻いている。

 

そうやって戦いの歴史は紡がれていくが、その背景には「こういうオタクを馬鹿にする記事こそが大衆にウケる」という人口比率があったから、こんなおぞましい記事が生み出されたのだろう。

 

多分、オタクはもっとその知識を広めないといけないのだと思う。

無知は差別を生むのだから、その技術を教えて仲間にしてしまえば、差別は減るのだと思う。

 

・パソコンに詳しいとこんな面白いゲームがプレイできるよ!

・ネット文化に詳しいとこんな面白い会話ができるよ!

 普段馬鹿にしている一般人と、こういう交流をやってこなかったツケが来ているのではないだろうか。

 

確かにオタクの文化はだいぶ大きな市場になってきたが、まだそれだけでは精神の融和が追い付いていないから、今回のような「馬鹿の数に期待した戦法」が通ってしまったんじゃないだろうか。

 

オタクじみた精神がいつまでたっても抜けていない。

笑うより先にやらなければいけないことがある。

 

社会には、愛がなければ勝てない。

そう考える。