愛と怒りと悲しみの

とある理系サラリーマンのばら撒き思想ブログ

「10日かかります」「お前ならできる、5日でやれ!」

 

社会人というものはいつも納期に追われる。

「この仕事をいつまでに完成させる」という約束のことだ。

学生の頃にはあまり馴染みのなかった概念だが、社会人になるとマジでこればっかりになる。

 

この本なんかを読んでみると、空気がよく想像できる。

仕事の質よりも納期のほうが優先的な事項である。なぜならば、締め切りを過ぎてしまったものはどんなに優れたもので世に出すことができないのだから。

世に出せるぎりぎりの範囲というものが、締め切りという言葉の意味である。

手塚治虫は、そんな状況でも納期より仕事の質の方を優先させた。数々の反則技を使ってまで。

だから神のように偉い、といった内容がこの本に書いてある。

 

今日は、この納期に関する反則技のことを書いてみようと思う。

ただし手塚治虫のように仕事を請け負う側ではなく、仕事を発注する側がやる反則技についてだ。

 

 

 1. いつかは言ってみたいこんなセリフ

納期というものはもちろん当事者同士が話し合って決めるものである。

だから例えば、仕事を受ける方にも「この仕事には10日くれ!」と要求する権利はあるわけだ。

それに対して、仕事を出す側が「お前ならできる、5日でやれ!」ということがある。

これが、今回取り扱う反則技だ。

このセリフは映画やドラマみたいでかっこいいから使ってしまう人がいるが、本来は相当の用意が無ければ使ってはいけないセリフだ

 

例えば、「ジョジョの奇妙な冒険」第五部で、ブチャラティがこの発言をしているシーン。

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このシーンでは、ブチャラティは相当の準備をクリアしたうえでこの反則技を使っている。

ブチャラティアバッキオだからこそ成り立ったシーンであり、日本のなんでもないサラリーマンみたいな人間が真似をすると確実に痛い目をみる。

 

こういうシーンは、当の指揮官にとってはとても魅力的である

「的確で情熱のある指揮」と「能力を信頼した仲間」が力を合わせて、数値以上のスペックを出して困難を乗り越えれてしまうのだから。

これ以上ないぐらいの信頼関係が生まれるだろうし、「ほら俺の言った通りだろう」という究極のマウンティングもできる。

だからこそ、欲を出して判断を誤ってしまう。

 

 

 2. あらかじめ用意できてないといけないこと

以下に、この戦法を使う際に必要な条件を記す。

 

・その1「削る時間に納得できるような妥当性があること」

例えば「10日かかる」と言われて「5日でやれ」という場合、どうやって5日間削れるかを説明できないといけない。

「いつもの二倍気合を入れれば半分で終わるだろ?」みたいな根性論では決して通らない。

(先の画像のブチャラティは実はここが少し弱いのだが、スタンドは精神力で動くものだから…)

 

もちろん、仕事を受ける側も適当に「10日」といったわけではないので、これをクリアするのが一番難しい。

互いの仕事を熟知して、相手の仕事を尊敬することが前提条件である。

 

「こういう状況を加味すれば10日と言っておいた方がいいな」といったような条件を含ませている場合で、その状況をどう加味するか?という交渉をすることの方が実際には多い。

納期の短縮とは、根性やお願いではなく、交渉である。

 

 

・その2 「ミスった場合に責めないこと」

仕事を受ける側は、何か特別な手法を使えば5日でできるかもしれないとしよう。

その特別な手法を使っていいかどうかの交渉もクリアしたとしよう。

 

でも、まだ壁が残っている。その特別な手法は失敗する可能性があるからだ。

安全に成功できるのだったら、交渉が終わった時点で「じゃあ5日で出来る」というに決まっている。

 

失敗した場合に、5日で出来るって言っただろう?」という後出しをしないという保証が必要である。

こういった信頼関係があって初めて、「わからないけどやってみる!」という言葉を引き出すことができる。

やったけど間に合わなかった、やったけど雑だった、やったけどほかのことを犠牲にした。いろんなパターンがあるが、すべての場合で無条件で許さないといけない。

 

そして仕事を出した側は、「5日で出来るかもしれない」という不確実な情報で動くリスクを背負わないといけない。

それを背負う気概があって初めて「お前ならできる!5日でやれ!」という戦法を使うことができる。

 

 

 3. 圧力で押し通した場合の不幸な未来

すなわち、仕事を受ける側と出す側の間に、相当の信頼関係が無ければならない。

互いの仕事を理解して尊敬しあうこと。

失敗した場合の処遇を保証すること。

最低でもこれだけのことができていなければいけない。

 

しかし信頼関係が無くても、圧力や恫喝を使って「10日を5日にしろ」ということはもちろん簡単である。

現実には、漫画や映画と違ってこの方式でやらされているケースのほうがずっと多い…

 

圧力を使ってこの戦法を実行してしまった場合は、最終的には仕事を発注する側に不幸が起こる。

 

最初の交渉の段階で、仕事を受ける側が隠し事をするようになる。

なぜならば、恫喝だけで動かせられているのなら、「5日で出来るって言っただろう?」というリスクを一方的に背負うだけだからだ。

最初から「断固10日かかります」と言い張ったほうが得に決まっているからだ。

 

こうやって開き直られてしまうと、不利なのは仕事を出す側である。

最初の交渉がまともに機能しなくなるからだ。

 

「この仕事には10日かかります」

「今回は簡単でいいし余裕も見なくていいよ。5日で出来ない?」

「知ったことではありません。10日かかります」

 という対応をされるようになる。

 

ここで仕事を出す側は、「こうやれば10日もかからないで済むだろう」ということを立証しないといけないが、隠し事合戦になった場合に有利なのは仕事を受ける側の方だ。

水掛け論にしてしまえば「10日かかる」ということを押し通すことができる。

 

さらに極論すれば、

「この仕事には100日かかります。(  ゚д゚)、ペッ」

とか言い張ってしまうことも可能になってしまう。

そしてなんで100日もかかるのかと言われたら、その理由は「仕事を出す側の対応がクソだから」と言われてしまう。これはとても痛い。

 

もちろんここまでやられたら仕事を頼む先を変えるという選択肢もあるが、いつでも変更ができるわけでもないし、自分が必ずお客様の立場にいるとも限らない。

 

こうして仕事を出す側は、本来の納期以上の余裕をとって仕事を進めないといけなくなる。

全ての工程において誰も彼もが余裕を含ませるので、最終的な納期はずっと遅くなってしまう。

 

納期に限らず、無理なものは無理と主張しないと、このような世界が来てしまう。