厚生労働省のストレスチェックに対して考えること
2016年度から、労働安全衛生法により、一定規模以上の企業はストレスチェックを行うことが義務化された。
内容は、厚生労働省の以下の資料に分かりやすくまとめられている。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
自分が働いている会社でも、近々行われることになり、説明会が開催された。
きっとよその会社でも、何らかの形でアクションがとられているのだろう。
今回はこのストレスチェックについて、考えたことや調べたことをまとめて見る。
このストレスチェックに対して、個人的な意見や感想を書いている人は意外と少ないと思ったので。
目次:
1.ストレスチェックは茶番であるのか?
いきなりこんな題名ではあるが、まず一番の論点になるのはここだ。
大前提として、多くのサラリーマンは、ストレスチェックなど茶番だと思っている。
企業が、従業員に対してストレスチェックを行わないことによる直接の罰則は、現状無い。
一応、ストレスチェックを行わないことにより何か裁判沙汰になった場合は、労働契約法の安全配慮義務違反で責任を問われることはあるようだが、どのみち事後の話だ。
そして普通のサラリーマンは、自分の会社相手に裁判を起こすような気概も能力も持ってはいない。
ストレスチェックが義務化されたと言っても、この時点でハイ解散、となっても仕方ない。
厚生労働省が何かルールを義務化したと言ったところで、「どうせ何も変わらないんでしょ?」という失望が先に出てくる状態だ。しかもその予測は大体のケースにおいて正しい。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」というルールが、すでに有効性を帯びてきてしまっている。現代の日本の労働環境においては、証拠が明らかなパワハラやサビ残すら、労基は取り締まることができていないんだ。こんな状態で何を信じろと言うのだ。
多かれ少なかれ、パワハラとサビ残を味わったことがない正社員など、この国には一握りも存在していない。もともと現代の日本においては、サラリーマンと企業の信頼関係は、心情には成り立っていない。
今回の「ストレスチェック」のルールには、「人事権を持つ人はその紙を閲覧したり手に取ることはできない」とある。だから、ストレスチェックの結果が当人に不利な結果をもたらすことはない、ということになっている。
が、普通の企業ならば嫌でも目に入ってしまうし、悪い企業ならば積極的に盗んで利用する。間違いなく。
証拠は完全に消すことができるし、もしそれが暴かれることがあったとしても、その時にはすでに原告が死んでいるから無意味だ。
そしてストレスチェックが茶番だと思われる一番の理由は、「面談をしたところで何がどうなるものでもない」という点だ。当然この問題は残っている。
例え、最大限に結果を汲んでくれる超優しい会社であったとしても、ストレスチェックに引っかかった者への対応としては、異動させたり仕事を減らしたり、という内容でしかない。間違っても、サビ残がキツそうだから残業代をちゃんと出そう!という沙汰にはならない。
以上の理由により、ストレスチェックはやはり根本的には茶番であると言えてしまう、と思う。
しかし、一応今回のストレスチェックは、労働者の側からすれば、「タダで降ってきた権利」であると自分は考える。
今回のストレスチェックは、それ自体には一定の効果があるテストだと思う。そのテスト結果を会社が良い方向に利用してくれるかと言えば、8割がたNOなのだろうけど。
したがって、声を出せる元気があるならば、とりあえず訴えるだけ訴えておけばいいんじゃないだろうか。
2.ストレスチェックの効果と対策
ストレスチェックの内容は事前に公開されている。
厚生労働省のサイトで、問題全文をWord形式でダウンロードできる。
大体の流れとしては、以下のような質問を全部で40問行い、そう思うorそう思わない を4段階でチェックシートに書き込む、というものだ。
- 非常にたくさんの仕事をしなければならない
- (最近一か月の間で)活気がわいてくる
- 職場の上司とどのくらい気軽に話ができますか? など
「こんな質問並べたぐらいで人の心など分かるものか」と思うかも知れないが、間違いなく効果はある。
なぜならば、本当にメンタルがやばいことになっている人は、こんなテストもまともに答えられないぐらいの惨状になっているから。
現代社会はそこまで人を追い詰めるものであり、そういう被害者が多発したからこそ、今回のストレスチェックが企画された。
ストレスチェックでよく指摘される問題点の一つとして、「成績が悪かった者はストレス耐性が弱いというレッテルを貼られてしまう」というものがある。それによって、立場が悪くなったり、出世に響いたりするという恐れがある。
しかし先述したとおり、この程度のテストに合格できなければ、レッテル貼りとか心配するまでもなく、本当にまずい。
ストレスチェックを受ける社員の中には、「現状なんとか耐えれるけど弱みを見せたら不利益な扱いを受ける」という微妙な立ち位置にいる人もいるだろう。
そういう心配があるなら、ストレスチェックは拒否できるルールがあるし、その選択すら無理だと言うならば、適当に嘘を書いてクリアしておけばいい。
問題は先の厚生労働省のサイトですべて公開されているので、心配な人は予習しておこう。
しかし、ストレスチェックでやばい判定が出た場合でも、実際に医者と面談ができるまでに2~3か月はかかる。その期間に耐えきれる人でないと意味がない、と言う側面はある。
今日一日が耐え切れない本当にヤバい人は、助からないテストではある。
3.ストレスチェックの取り扱いについて
今回行われるストレスチェックは、今回行われるストレスチェックは、本当にヤバい人をあぶりだすことができる、必要で有効なテストだと思う。
だから、ストレスチェックを外部に丸投げしようなどと考える企業は、そもそも腐っている。そういう意味では、自分の会社を判断する機会を与えてくれるという効果もありそうだ。
先述したように、別にストレスチェック自体で社員が救われるわけではない。
本当に必要なものは、法的な救済などではなく、会社と社員の信頼関係の再構築である。
今回のストレスチェックは、企業にとっては受けさせることは義務であるが、従業員にとっては受けることは義務ではない。
このルールを悪用すれば、ストレスチェックさぼりたい会社からすれば「何故か社員全員が受けようとしませんでした。終わり。」で済ませることもできる。
そして、「そういう風に済ませてくれる」ということをセールスポイントにする委託先もあるのだろう。
そして多くの企業は、今回のストレスチェックは外注に丸投げしているようだ…
その理由としては、企業医がやる気なかったり(合法)、そもそもいなかったり(違法)と言うのを除けば、やはり「忙しすぎて無理」と言うところが多いのだろう。
しかし、これぐらいはメンタルヘルスに手間を割けるような会社じゃなければそもそもまずい。
今回、厚生労働省がそう判断したのが、このストレスチェックのあらましである。
まとめると、今回のストレスチェックはまだ不十分な面もあるが、大丈夫な面を見ればとりあえずは有用であると言える。
これだけ全国的に実施されるのはこれが初めてだから、さぼらずにきっちり行うのをお勧めする。
選挙と同じで、「ちゃんとやる人」が多ければ効果は見直されていくと思う。
そして選挙と違って、割と確実に自分に結果が跳ね返ってくるのだから。